Yahooニュースにこんな題名の記事が
「信じてはいけない アパート経営で大儲け!」
記事の元は雑誌「プレジデント」で配信は2012年5月18日(金)10時30分。
要するに賃貸業はそんなに甘くないぞ!ってな内容で、私も全く同じ意見です。
記事では、アパート経営を勧める大手不動産業者の「一括借り上げシステム」の問題点を指摘している。
これは実際にそういった業者と契約してしまった地主から直接耳にしているので、内容的には間違っていません。
30年保証
聞こえは良いですが、「30年間 同じ賃料を保証」とは言ってないところがミソ。
定期的に借り上げる賃料を見直すわけですから、個人的な意見としては、この広告表示は問題がある気がします。
30年間も同一賃料で保証するなんてことは、不動産業界では考えられません。
まぁ、一般的な相場が10万円の物件を「2万円で30年間保証」なら出来るかもしれませんが・・・
「一括借り上げ」という言葉で安心させようという魂胆でしょうが、そもそも企業は営利目的ですから、一括で借り上げて、借り上げた賃料よりも高く貸して利益を確保するわけです。ごくごく当たり前の話です。
しかも、建築でも利益を得るわけですから、これは儲かります。広告もバンバン出します。儲けたお金で。
で、定期的に(3年とか5年とか)借り上げる賃料を見直せる契約なんですから、借り上げる方の会社のリスクも回避できるわけです。
不動産賃貸業はそんなに甘くないです。
これからは更に厳しくなります。
景気の先行きも不安ですし、人口の減少は確実です。
私も不動産屋ですから、地主さんがマンションを建てるとなれば儲かるので有難いのですが、数字は厳しめに弾き出します。
そして、立地条件などを考慮して「建てない方が良いですよ」と言ってしまうこともあります。
だって、建てた後に入居者を募集するのはウチの会社ですし、空室が多くなれば文句言われるのは私なので。
↓ 以下はYahooニュースより引用
今書店に行けば、「アパート・マンション経営を勧める本」が数多く並んでおり、多くが、「高利回り」や「老後の安定」「相続税対策」などをうたい文句にしている。例えば、地方都市にある親の土地にマンションを建てたり、アパートを一棟買いするなどして成功した人の話などが紹介されている。しかし長年、不動産の売買に関わってきた私は声を大にして警告したい。「これからアパート・マンション経営はしてはいけない」と。
多くの人は、アパート経営を勧める大手不動産業者の「一括借り上げシステム(サブリース)」という言葉に惹かれて投資を考える。アパートの建築契約を交わせば、業者側が部屋を借り上げるしくみで、「30年間保証」などといううたい文句によって「30年間、投資物件の家賃が保証されるのではないか」と考えるわけである。
しかし、このシステムは部屋を借りることを保証するだけで、家賃額を保証するものではない。一定期間のみ家賃を保証し、その後は市況によって家賃を調整することになる。年数が経って建物や設備が古くなれば、家賃が下がっていくのは普通のことだから、ほとんどの場合損をすることになる。最初の3年は一定の額を保証されることが多いが、この手の投資用物件は建築費用が相場より割高なことがほとんどだ。その差額で業者が家賃保証をするしくみなのである。そもそもサブリースは、家賃相場の8~9割が大家に支払われるシステムなので、最初から家賃を下げて自力で探したほうが得だといえるだろう。新築当初1年から2年間くらいはそれなりに高い入居率となるかもしれない。しかし、それは、これまで古いアパートに住んでいた人が、新しくて設備のよい部屋に入りたいと移ってきたケースが多い。5年も経てばもはや新築ではなく、新しい物件に対抗するために、さらに家賃を下げなければ入居率が下がるはずである。
もう一つ、固定資産税や土地・建物の評価額は、アパートの入居率が低下しても同額である。一等地でない限り、アパート・マンションは、建ててから5年経過すると利回りも半分程度になると思ってよい。最初に業者がうたうような高い利回りは決して長く続かないのだ。ここで、多くの不動産業者は「家賃を上げるためにアパートのリフォームをしないか」などと持ちかけてくるのだ。「銀行から資金を借りればいい。ローンがあれば土地の相続税も安くなりますよ」などと誘ってくる。しかし、結局、家賃収入の倍近くの返済をしなくてはならないこともしばしばで本末転倒である。ほどなく破綻し、物件は競売にかけられる可能性も高い。
高度成長期からバブル期までの「土地神話」はとっくに崩れ去っている。大規模地震発生の可能性も強まっており、都市部で再び震災が起これば不動産市況はますます厳しくなるはずだ。今後、地価が上がる見込みがあるとすれば一部の都心の超一等地のみ。郊外や地方ではこれからさらに地価下落は続き、極端に下がらないのは、例えば東京都内に近い埼玉県の大宮地区や川口市、千葉県なら市川市あたりまでだろう。
少子高齢化で、日本の人口は毎年10万人以上減少している。アパートを借りる人そのものが減っている一方で、わが国の総住宅数は、10年前に比べて734万戸増加している。需要が追いつかず、すでに全世帯の約1割が空き家という状態である。
インフレヘッジには土地がよいなどとよくいわれるが、需給バランスを考えると、もはやほとんどの不動産はヘッジにならないだろう。すでにアパート経営を行っている人は、損を出しても今のうちに売ってしまったほうが賢明だと思う。5年後にはほとんどの物件価格はさらに安くなっているだろうから。—————————————————–
やすらぎ顧問、経営コンサルタント
須田忠雄
すだ・ただお●1946年、群馬県生まれ。78年、群馬県桐生市にやすらぎ設立、中古住宅再生事業を行い、ピーク時には日本一不動産を買う男と言われた。著書に『アパート経営はするな!』。