民法改正で個人保証人に極度額 (465条の2)

さて、民法改正で最大の改正点と言ってもよいかもしれないのがコレ。

個人保証人に極度額

個人で保証人になる場合は極度額、要するに保証の限度額を設定していないと、その保証契約は無効になるというものです。

極度額の設定が必要な契約

まず、保証会社などの法人が保証する契約では極度額は設定する必要はありません(設定しても構いません)。

個人が保証人となる契約には極度額の設定が必要となります。

極度額はいくらでもよい?

貸主としては極度額が多いほうが安心です。

では、10万円の賃料の保証契約に「極度額1億円」と書いたら?

これはたぶん無効になると思います。

公序良俗に反する内容は、いざ裁判となったら負ける可能性が高いです。

極度額の妥当な金額

多くても無効になる可能性が高いと考えられますが、いくらなら妥当なのか?

具体的に賃料の〇〇倍までは有効!と法律で定めてくれたら楽なんですが、定められていません。

法律のプロの方に質問しましたが、保証する賃料の12~18ヶ月分の範囲であれば無効になる可能性は低いのではないかという事でした。

極度額の記載方法

具体的な金額で記載するのが望ましいです。

賃料10万円、極度額を賃料の12ヶ月に設定する場合は「120万円を上限として負担する」という書き方が最善です。

では「賃料の12ヶ月分を上限として負担する」と記載した場合は?

出来ればやめておいて下さい。

なぜか?

ほとんどの賃貸借契約書には「賃料等の改訂」という項目があり「税金、近傍類似の賃料の変動を起因として賃料が著しく不相当と認められる場合は賃料等の増減を相談できる」のような内容の条文が書かれています。

賃料は増減する可能性がある

定まっていない

という理論で「無効だ!」と争いのもとになる可能性があるからです。

もちろん「有効」とされる可能性が大ですが、争点となるような曖昧な書き方をわざわざする必要はないのではないかと思います。

具体的な条文

シンプルに書くと下記の通りとなります。

(連帯保証人)
連帯保証人(丙)は、借主(乙)と連帯して本契約から生じる乙の一切の債務を〇〇万円を上限として負担するものとする。

もう少し詳しいのが良ければ下記のようになります。

(連帯保証人)
第〇〇条 連帯保証人(丙)は、借主(乙)と連帯して本契約から生じる乙の一切の債務(賃料、遅延損害金、賃借人としての義務違反等に基づく損害金を含む一切の債務)を負担するものとする。本契約が更新された場合においても同様とする。
2 前項の丙の負担は極度額〇〇万円を上限とする。
3 丙が負担する債務の元本は、乙又は丙が死亡したときに確定するものとする。
4 丙の請求があったときは、貸主(甲)は、丙に対し遅滞なく、賃料及び管理費等の支払状況や滞納金の額、損害賠償の額等、乙の全ての債務の額等に関する情報を提供しなければならない。

こちらは改正で新たに貸主に課せられた「情報提供義務」も書いてあります。

この情報提供義務とは、賃料の支払い状況を保証人から尋ねられた場合、貸主は答える義務があるというものです。

これまでの法律では個人情報の問題がありましたので、情報の提供は義務づけられていなかったんですね。